研究概要 |
20万種類とも予想されるヒトのノンコーディングRNA(ncRNA)の大部分は,配列相補性に依存せずに機能するタイプと予想され,未開)大陸に等しい。これら相補性非依存型のncRNAは,タンパク質と同レベルの個性ある立体構造を形成して,様々な生体分子と相互作用するとみられる。そのような性質をもつ分子は「アプタマー」と総称される。本研究では,1)ncRNAに内蔵された天然アプタマーの探索研究と,2)試験管内進化法(SELEX)を用いたムエアプタマーの創成によるRNA機能の多角的研究開発を実施して,相補性非依存型ncRNA研究の分子基盤を確立するために研究を実施し,以下の知見をえた。 1)天然RNAアプタマーの探索研究:昨年度開発した細胞内RNAの網羅的分離技術を用いて既知のタンパク質(HEXIMI&UIA)について複合体として分離されるRNAを分離解析し,結合パートナーとして既知の7SK RNAとUIA RNAが感度,精度とも十分に分離できることを確認した。 2)RNA合成生物学(synthetlc blology)的研究:アプタマーによる機能制御を介したモデル遺伝子回路を構築するため,T7 RNAポリメラーゼとSP6RNAポリメラーゼに対する活性阻害性RNAアプタマーを作製し,それらめ特性を解析した。 3)細胞内RNA動態解析ツールの開発:細胞内の標的RNAを可視化する新しい技術を開発する目的で,Cy3対する特異的なRNAアプタマーを作製し最適化を進めた。アプタマーの結合によりCy3の蛍光特性が増強するという予想外の性質が明らかになった。 4)人工RNAアプタマー医薬の開発:炎症性サイトカインであるミッドカインに対するRNAアプタマーの作製,最適化,invitroアッセイを完了し,これが多発性硬化症に対して優れた抑制ならびに治療効果をもつことをモデルマウスで確認した。
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