研究課題
本研究では、1)試験管内進化法を用いた人工アプタマーの創成によるRNA機能の多角的研究開発と、2)ncRNAに内蔵された天然アプタマーの探索研究を実施した。以下にそれらの成果を要約する。1)「人工RNAアブタマーの機能特性研究開発」 (1)IgGアブタマー:ヒトIgGに対する高親和性アブタマヤを作出し、IgG抗体との複合体の構造を、NMR分析とX線結晶構造分析し、1.9Aの高解像度の構造を明らかにした。その結果、アブタマーRNAが複数の分子内相互作用を織りなし、IgGの形状にジャストフィットする実像が原子レベルで明らかになった。RNAの優れた造形力は驚くほどである。(2)Midkine(MK)アブタマー:炎症性サイトカインであるMidkineに対する高親和性のRNAアブタマーを作出した。最適化したRNAは、自己免疫疾患の発症抑制の薬効をモデルマウスで確認した。現在、同時に、結合機序に関する構造生物学的な研究を進めている。(2)FGFアブタマー:酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)に対するアブタマーを作出した。その細胞活性を試験する過程で、ヘパリン+aFGFにより細胞増殖が促進されるヒト軟骨肉腫細胞株SW-1353の増殖試験において、予想外に、取得したRNAアブタマーがヘパリンを機能的に置換することを発見した。予想外のこの結果は、RNAによるヘパリンの機能的な分子擬態(functional mimic)を示唆するため、現在複合体の共結晶解析を進めている。2)「天然RNAアブタマーの探索研究」 non-coding RNAの体系的な解析に必要な探索システムの開発を継続して実施した。研究の要点は、SELEX法に用いるランダム配列の合成RNAのプールの代わりに、細胞から調整した天然のRNAプールを使用するという点である(Genomic SELEX)。最初に鎖長や量もまったく不均一な細胞のRNAを、傷つけず、微量漏らさず、分離して、SELEX用の配列加工を加える換作が予想以上に困難であったが、ようやく、そのバリアーを解決し、Genomic SELEX法を確立した。これを用いて、複数の生理活性タンパク質に対する天然アブタマーの分離を進めているが。その中で、UIA, HEXIMl、PABPlタンパク質に対する候補RNA分子種を分離、解析中である。
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