研究課題
本年度は、試験管内進化法(SELEX)を用いた人工アプタマーの創成によるRNA機能の多角的研究開発に特化して研究を推進した。以下にそれらの成果を要約する。1)IL-17Aアプタマー:T細胞サブタイプTh17細胞が産生するサイトカインIL-17Aの発現異常は自己免疫疾患の要因となる。今年度、ヒトIL-17Aに対して作出したアプタマーの薬効評価と医薬開発を目的とした最適化実験を実施した。開発候補アプタマーはIL-17Aに対して解離定数50pMの強い親和性をもち、受容体への結合を顕著に阻害する。試験管内反応と細胞試験でも強いIL-17A阻害効果を示し、2種類のマウス病態モデル(EAEモデルと誘導関節炎モデル)において顕著な発症抑制効果が確認された。医薬開発のGLP試験のために候補品の最適化と塩基修飾による安定化を行った。2)IL-17A/Fヘテロ2量体特異的アプタマー:IL-17には6種類のサブタイプが存在し、そのうちIL-17AとIL-17Fの2種類が主要な構成メンバーである。IL-17は2量体を形成するため、生体内にはホモ2量体(IL-17A/AとIL-17F/F)とヘテロ2量体(IL-17A/F)が存在し、上述のIL-17Aアプタマーや既存の抗体がホモとヘテロいずれにも交差するためにIL-17A/F単独の機能が明らかにされていない。本研究ではIL-17A/Fヘテロ2量体に対してsubtractive SELEXを行い、ホモ2量体に交差しないIL-17A/Fヘテロ2量体特異的なアブタマーの創製に成功した。この特異性は細胞評価においても確認できた。3)IgGアプタマー:ヒトIgGに対するアプタマーとIgGとの複合体とのX線結晶構造解析から、電荷相互作用を伴わずに、多数の弱い結合(水素結合やファンデルワールスカ)によって、アプタマーRNAがIgGの結合面の形状にinduced-fitし結合する原子像を明らかにした。このようなRNAの優れた造形力に対して、RNA Plasticityという概念を提唱した。
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