研究課題
脊椎動物の体節形成における、「時間の周期性から形態の反復性への変換」の分子機構の理解を目的に、本研究ではそこに関わる遺伝子の同定と機能解析を進めて来た。昨年度までの研究により、Ripply1/2、Mesp2、Tbx6,とNotchシグナル系からなる分子ネットワークが、マウスの未分節中胚葉における時間的周期性から空間パターンへの変換に重要であり、その中でも特にRipplyを介したTbx6タンパク質の分解が体節境界の位置を決める上で必須であることを示した。体節周期や体節形成に関わる因子が動物種により異なることから、マウス以外の生物としてゼブラフィッシュに着目し、時間的周期性から空間パターンへの変換に関わる分子機構を解析した。ゼブラフィッシュでは、Tbx6と構造的によく似たTbx24が体節の分節化に関わることから、Tbx24の抗体を作成しゼブラフィッシュ胚において免疫染色をおこなったところ、体節の予定分節位置がTbx24タンパク質発現領域前方境界と一致し、しかもRipply1ならびにRipply2機能阻害胚では、この発現境界が大きく前方へと拡大していた。このことから、ゼブラフィッシュ胚においてもRipplyを介してTbxタンパク質の発現境界が規定され、分節境界位置が決まるものと結論された。この研究と平行して、体節とならんで分節的な形態を取る咽頭弓に注目し、その発生に関わる分子基盤を解析した。その結果、各咽頭弓の発生過程ではNotchリガンドであるJagged2が一過的に発現し、それがIntegrin/fibronectinを介して咽頭弓上皮の秩序だった形成を促すことが示された。
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