以前の我々の研究で、ジーンサイレンシング抑制能が低下した変異HC-Proを持つクローバー葉脈黄化ウイルス(CIYVV-193MM)はマメ科植物に対する病原性(えそ病徴や矮化)も低下することが分かっている。そこで、CIYVV-193MMに他のウイルスのサイレンシング抑制遺伝子P19と2bを挿入した組み換えウイルスを作成し相補試験をしたところ、少なくともエンドウに対しては野生型CIYVVと同様の病徴を示したことから、CIYVVの病原性の発現にHC-Proのサイレンシング抑制能が必要なことが示唆された。ショウジョウバエのS2培養細胞ではCIYVVのHC-Proはジーンサイレンシング抑制能を示さなかったが、HC-Proと相互作用することが知られるタバコのrgsCaMはS2細胞においてもサイレンシング抑制能を示した。また、その抑制はsiRNA形成後の過程であることが分かった。一方S2細胞で安定発現する外来遺伝子はジーンサイレンシングによる部分的な発現抑制を受けることが知られている。意外にも、rgsCaMとGIYVVのHC-Pro両方がこの外来遺伝子の発現を上昇させることが新たにわかった。キュウリモザイクウイルス(CMV)の2bタンパク質によるPTGSサプレッサー活性にCMVサテライトRNA(satRNA)が及ぼす影響を解析するため、プロトプラストによるin vitroのアッセイ系を構築することに成功した。この系に任意の2本鎖RNA(dsRNA)(GFP dsRNAなど)を加えた場合、リポーター遺伝子(ルシフェラーゼ、LUC)のPTGSは相対的に低下した。しかし、satRNAのdsRNA(ds-satRNA)を加えた場合にはLUCのPTGSが低下しなかったことから、ds-satRNAはPTGSを受けていない可能性が示唆された。
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