1. エンドウのえそ病徴発現には半優性の対立遺伝子とサリチル酸経路の活性化が必要であることを明らかにし、この活性化にHC-Proのサイレンシング(PTGS)抑制能が関与していることも示した。クローバ葉脈黄化ウイルス(C1YVV)が誘導する細胞死は、過敏感反応細胞死(HR)と類似した機構で誘導されると考え、抵抗性反応が起きているかを調べた。その結果、抵抗性反応に重要なサリチル酸経路のマーカー遺伝子(SA-CHI)とHR関連経路のマーカー遺伝子(HSR203J)の発現量が顕著に上昇していた。PTGS抑制能が低下した変異株C1-CBとC1-D193YはHRを誘導する能力が低下しているが、SA-CHIとHSR203Jの発現を誘導する能力も低下していた。さらに、サリチル酸経路を活性化する薬剤を処理したところ、C1-CBおよびC1-D193Yの細胞死誘導能が部分的に回復した。以上から、C1YVVの強毒性にはサリチル酸経路が関与し、これをPTGSが制御していることを示した。 2. rgs-CaMがHC-Proと直接に結合していることを、生体分子間相互作用解析装置(BIACORE)で確かめた。同時にrgs-CaMがキュウリモザイクウイルス(CMV)PTGS抑制遺伝子2bと結合することを見出した。HC-Proと2bタンパク質は短鎖RNA(si RNA)に結合する性質があるため、si RNAを介して結合している可能性があるがsiRNAとrgs-CaMには親和性はなかったことから、rgs-CaMはHC-Proと2bに共通するsiRNA結合領域に親和性を持っている可能性がある。 3. プロトプラストで弱毒CMV2bタンパク質遺伝子とsat RNAを同時導入し、2bのPTGS抑制能を測定したところ、2bのPTGS抑制能をsat RNAのプラス鎖、マイナス鎖ともに阻害的に作用することを観察した。
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