研究課題
麹菌(A.oryzae)は我が国で、日本酒、味噌、醤油などの醸造に古くから使用されていることから安全が保証されている微生物であり、高いタンパク質分泌生産能力を持つため、酵素などの有用タンパク質生産にも利用されている。本研究は、ゲノム情報を駆使して、麹菌のもつ高いタンパク質分泌能を分子細胞生物学的手法により解析し、有用なタンパク質生産のためのセルファクリーとして利用しようとするものであり、今年度は下記のような結果を得た。1)麹菌の分泌ストレスの可視化酵母翅HAC1ホモログであるAohacAを麹菌から単離し、緑色蛍光タンパク質であるEGFPとの融合遺伝子を作成して形質転換株を得た。HAC1はERストレスによりイントロンが切り出されることが知られているので、イントロン除去により連結したEGFPとのフレームがあうようになり翻訳されるように作成した。本形質転換株は、ERストレスを起こすDTTやツニカマイシン処理により麹菌細胞内に蛍光が観察されたことから分泌ストレス可視化の系が構築された。2)麹菌カルネキシンの解析N-結合型糖鎖ビーズを用いて麹菌細胞膜画分から細胞内レクチンを単離し、LC/MS/MS解析によりカルネキシンと同定した。また、カルネキシン遺伝子を単離し、EGFPとの融合遺伝子を導入した形質転換株の解析によりERに局在することを確認した。3)タンパク質高分泌変異株によるキモシンの生産リゾチームを高生産する変異株として取得したAUT株により、キモシンの生産実験を行い、約100mg/1とリゾチームと同様に親株の約1.6倍の高生産性を持つことを明らかにした。4)味覚修飾タンパク質の麹菌による分泌生産ジスルフィド結合によるヘテロダイマー構造をもつネオクリンを、プロテアーゼ二重破壊株(麹菌NstApE株)により、培地中に活性のあるタンパク質として生産することに成功した。
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