研究課題
本研究では、生体内でのラミニンの機能構造を分子レベルで明らかにするとともに、幹細胞の増殖、分化、遊走に強く作用するヒト型ラミニンを酵母系で量産し、医療用素材としてその臨床効果と安全性を評価することを目的に、以下の検討を行った。1)ラミニンα4鎖G領域が脂肪新生を抑制する効果について、G領域全体(LG1-5)を加えた場合よりもその部分構造であるLG4-5領域が顕著であり、これは脂肪細胞が分泌するラミニン-411からα4鎖のG領域が切断されて脂肪前駆細胞または血管内皮細胞に働きかけて脂肪新生を抑制するメカニズムが示唆された。その活性中心はLG4モジュールの中にあり、その受容体であるシンデカン-2および-4の抗体をこの系に添加すると同じく脂肪新生が抑制されることを見出した。これらの結果より、「脂肪分化に伴って発現するラミニンα4鎖から切断されるLG4-5領域が、ヘパリン結合性増殖因子と競合的にシンデカンに結合して、成熟脂肪細胞の近隣の幹細胞を増殖刺激から遮断している。」というモデルを提唱した。2)昆虫細胞由来無細胞タンパク質合成系を用いて、ヒト・ラミニン-332の構成鎖を合成し、in vitroで各鎖の会合を解析した。β3鎖およびγ2鎖の短腕を完全に欠失させたクローン、またα3鎖の短腕およびG領域を欠失させたクローンを作製して会合実験を行ったところ、共発現させたときのみα3鎖、β3鎖およびγ2鎖が会合してジスルフィド結合した三量体である「ミニ・ラミニン」の合成に成功した。またin vitroの会合実験においては、ラミニンの短腕やG領域が鎖会合の障害になっていることが示唆された。
すべて 2008
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Development, Growth & Differentiation 50
ページ: 97-1007