研究概要 |
本研究の目標は,トロホブラスト細胞から時期(着床期)特異的な発現をするIFNτ遺伝子の発現制御機構と,この遺伝子の発現によって誘導される母体側と胚側の遺伝子群を明らかにすることによって,受胎の認識,胚の接着,浸潤から初期胎盤の形成までの理解を深めることにある。2年目ば以下の項目を達成した。 1.ウシ,トロホブラスト細胞株CT-1とウシ,腎臓MDBK細胞株の間の遺伝子発現をマイクロアレイ法で解析した。さらに,ウシ妊娠17日目(伸長期)と20日目(接着期)のトロホブラスト細胞にお埜ても,それらの遺伝子発現をマイクロアレイ法で検証した。トロボブラスト細胞特異的な遺伝子発現として,新たに転写因子GATA-2とGATA-3を同定した。また,接着特異的な遺伝子としては,内在性レトロウイルス由来の新規遺伝子のRetro1を同定した。 2.転写因子GATA-2やGATA-3の強制発現では,IFNτ遺伝子の発現は変化しなかった。ところが,siRNAによる発現抑制を行うとIFNτ遺伝子の発現が著しく低下した。現在,GATAだけではなく,転写因子Cdx-2を含めてIFNτ遺伝子の発現制御を検討中。 3.時期特異的なIFNτ遺伝子の発現制御メカニズムの解明のためのエピジェネテックからの研究が格段に進んだ。これは,昨年11月,2年目になるテネシー大学との同研究だけではなく,北海道上士幌の全農ウシ,胚移植(ET)センターでの採材も可能になり,いままでの細胞培養系だけではなく,生体内系の解析も可能になったごとによる。これらの成果は,各学会発表に反映されているだけではなく,現在,インパクトファクター(10以上)の高い論文を作成中にも反映されるようになった。 4.日本全薬工業(ゼノアック)の王博士により,組換えIFNτタンパクの安定供給が可能になった。また,平成19年度に計画したESやTS細胞によるトロホブラストの構築や再構築および子宮内移植実験は平成20年7月より開始する。
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