本研究の目標は、トロホブラスト細胞から時期(着床期)特異的な発現をするIFNT遺伝子の発現制御機構と、この遺伝子の発現によって誘導される母体側と胚側の遺伝子群を明らかにすることによって、受胎の認識、胚の接着、浸潤から初期胎盤の形成までの理解を深めることにある。3年目は以下の項目を達成した。 1. IFNT遺伝子の発現制御の研究では、いままでの転写因子だけではなく、エビジェネテック制御に関する知見をかなり得ることが出来た(論文BOR2009)。トロホブラスト細胞特異的な転写因子CDX2は、転写因子だけの働きだけではなく、アセチル化能を保有することを発見した(現在、論文作成中)。 2. ウシ・トロホブラスト細胞CT-1株と子宮上皮細胞との培養実験では、CT-1細胞にどのような処置をするとin vivo(子宮内)を反映するようになるか分かってきた。また、子宮上皮細胞の不死化も進行中である。 3. テネシー大学との共同研究は進んでおり、2008年11月にもヒツジ・トロホブラスト細胞などのサンプリングを行い、当研究室に搬送した。 4. 組換えIFNTタンパクの作製だけではなく、IFNTに対する抗体を作製し、それが今までのものより、特異性がはるかに高いことを確認した。 5. マウスES、TSやiPS細胞を用い、それぞれに胚盤胞様の構造を作り出すことに成功した。また、その胚盤胞構造にCDX2を発現させ、偽妊娠マウスの子宮に移植し、着床、脱落膜形成や胎盤構造を作らせる実験系を確立した。今後、この解析系からもかなりのデータが期待できる。
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