研究課題
基盤研究(S)
妊娠・着床期特異的に発現される反芻動物(ウシやヒツジ)インターフェロン・タウ(IFNT)遺伝子発現制御機構の解明から、人為的にIFNT遺伝子の発現を制御できる培養細胞系を構築し、その中で新たな機能遺伝子を同定する。さらに、その遺伝子群を使いながら、最終的には妊娠・着床や胎盤形成のメカニズムを明らかにすることであった。ウシIFNT遺伝子には2つのアイソフォームが存在する。その1つのIFNTc1では子宮側の反応としてMx2の発現が誘導されることを突き止めた。胚細胞と子宮細胞の共培養系では、妊娠子宮灌流液の添加によって胚CT-1細胞の遺伝子発現(CDX2, IFNT, EOMES)をin vivo様の発現を誘導することが出来た。伸長胚が子宮内膜に接着を開始するとIFNT遺伝子上流域のヒストン・タンパク(H3)のアセチル化が下がり、メチル化が上昇した。ウシ伸長胚は接着期(妊娠20日目前後)後期に上皮細胞でありながら間葉細胞系遺伝子を発現する。このことが胚・上皮細胞の子宮内膜上皮細胞への接着を可能にしている。さらに、早期妊娠診断技術の開発は北海道全農ETセンターとの共同研究で行っており、数種の新たな遺伝子を特定した。いままで、着床から胎盤形成過程は「ブラックボックス」と呼ばれ、多くの現象は明らかにされていたが、それらのメカニズムは明らかにされてこなかった。本研究から様々な現象に対応・規定するメカニズムが明らかになってきた。今後とも、この一連の研究領域の進捗を止めることは許されない。
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