研究概要 |
ヌクレアーゼ抵抗性修飾核酸として,4種類の塩基を持つ2'-0-メチル-4'-チオリボヌクレオシド(OMeSNs)の合成を完了し,それらをアミダイト体に変換し,数種類の15mer OMeSRNAを合成した。これらは,一本鎖および二本鎖ともヒト血漿中で24時間以上安定であった(同時に調べた天然型RNAの半減期は10秒以下であった)。OMeSNsの5'-三リン酸体を合成した。4'-チオリボヌクレオシド-2'-フルオロ体および2'-アミノ体合成も着手し,対応するピリミジンヌクレオシドの合成は完了した。4'-チオDNAを用いるヒトトロンビンアプタマー取得を試みた。しかし,4'-チオDNAではPCRが行えないことが判明したため,アプタマー選択過程を4'-チオDNAで行ない,増幅過程を天然型DNAで行う新規SELEX法を開発した。ホタルルシフェラーゼに対するsiRNAの配列中でどの位置に4'-チオリボヌクレオシド(SNs)を取込めるかを検討した。センス鎖両末端の4残基ずつ,およびアンチセンス鎖3'末端の4残基にSNsを取込んだ場合に,高いRNAi効果を示すことを明らかにした。これらのsiRNAのヒト血漿中での半減期は4時間以上であった(未修飾のsiRNAの半減期は83分)。一方,遺伝子を凝縮したナノ粒子を核とし,その表面を脂質膜でコートしてコアーシェル型のナノ粒子を調製し,脂質層に膜透過性ペプチドR8を導入したR8-MENDの構築に成功した。これらのコア中にsiRNA発現プラスミドやアンチセンスオリゴヌクレオチドなどを効率よくパッケージできた。さらに,R8-MENDは,毒性を示すことなくアデノウイルスと同等の著しく高い遺伝子発現能を示した。R8-MENDによる高い遺伝子発現効率は,R8によって通常のエンドサイトーシスとは異なるマクロピノサイトーシスが誘起されるためであり,細胞に取り込まれた後のマクロピノソームはライソゾームとの融合による分解を回避できると同時に,マクロピノソームは内容物が細胞質へ漏れやすい性質を有するために最終的に効率よく核まで遺伝子が送達されることが明らかになった。
|