研究概要 |
ヌクレアーゼ抵抗性核酸の創出とそれを搭載するキャリアの開発を2グループで個別に展開し,3年目以降にそれらの成果を併せてin vitroおよびin vivoでの試験を行うのが本研究の主な目的である.〈ヌクレアーゼ抵抗性核酸〉については,主に,4'-チオリボヌクレオシドの2'位置換体の合成とオリゴヌクレオチドへの導入を行い,熱的安定性とヌクレアーゼ抵抗性を評価した.合成の容易さ;OMe体〉〉F体=NH_2体,熱的安定性;F体>OMe体>NH_2体,ヌクレアーゼ抵抗性;NH_2体>F体=OMe体となった.4種の核酸塩基(A,G,C,U)を持つ2'-OMe体は,がん細胞に対する細胞毒性を示さず,また,天然の2'-OMeヌクレオシドを含むRNAよりヌクレアーゼに対する安定性が40倍以上であることから,今後は2'-OMe-4'-チオ体をキャリアに搭載することにした.一方,本研究中に,4'-チオdCTPと4'-チオdTTPを酵素的に取込んだ長鎖shDNAをヒト細胞に導入したところ,そこから転写されるshRNAは,対照とした天然DNAプラスミドから転写されるshRNAよりRNA干渉能が高かった.この点については,4'-チオDNAの細胞内での安定性の反映であると考えている.さらに,デコイ法の候補としての曲がったDNAの設計に成功し,デコイ法に適用可能な環状DNAをクリック反応を用いて合成する方法を確立した.一方,〈キャリアとしてのMENDの最適化〉については,siRNAを搭載し、遺伝子発現を抑制するシステムの開発に成功した.また、遺伝子発現の細胞間ヘテロジェネイティーの原因を探求し、細胞分裂に起因したヒストン蛋白の重要性が示唆された.さらに、遺伝子デリバリーにおけるウイルスベクターと非ウイルスベクターの遺伝子発現効率の差に関しても遺伝子翻訳過程に大きな差があることを見いだした.
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