研究概要 |
初年度に確立した細胞膜タンパク質の可溶化、還元、アルキル化、トリプシン消化などの前処理方法によって、タンパク質断片をほぼ100%の調製できることが検証できた。BSAなど数種類のタンパク質について、トリプシン消化ペプチド断片を質量分析装置で検出し、ペプチド配列と検出強度との間の法則性を解析した。その結果、7-15個のアミノ酸から構成されること、膜貫通ドメインなど疎水性ペプチドを多く含む領域を排除し、塩基性アミノ酸が繰り返される領域を排除する、などの条件を満たしたペプチド断片を選択することで、質量分析装置で高感度に定量することが明らかになった。このin silico設計法は、タンパク質の配列情報にのみ基づいた定量的膜タンパク質の質量分析法を開発できたことになり、普遍的な高感度絶対定量方法の開発に成功した。当該ペプチド断片について3種類の娘イオンのMulti Reaction Monitoring modeで定量することで配列情報に関する定量結果の信頼性を高めることができることが分かった。開発した方法を用いて、マウス脳毛細血管内皮細胞に発現する輸送担体タンパク質の絶対定量を行ったところ、各々、Glut1 90.0±2.87 fmol/μg protein,Mrp4 1.59±0.07 fmol/μg protein, Bcrp 4.02±0.29 fmol/μg protein,Asct2 16.4±0.34 fmol/μg protein, Lat1 2.19±0.09 fmol/μg protein, Oat3 1.97±0.07 fmol/μg protein, Oatp2 2.11±0.12 fmol/μg protein, Oatpf2.41±0.16 fmol/μg protein, Taut3.81±0.60 fmol/μg proteinであった。
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