研究概要 |
ヒト血液脳関門におけるトランスポーターを解析するために、凍結ヒト大脳からメッシュ法を用いて脳毛細血管内皮細胞を単離する方法を開発した。質量分析装置を用いた高感度多蛋白質同時定量法によって、MDR1,BCRP,MRP4,ABCA2などのABC transporterやCAT1,LAT1,MCT1,EAAT1,GLUT1などのSLC transporterが発現していた。興味深いことにOAT3は定量限界以下であり、ヒトにおける有機アニオン輸送系はマウスと異なることが示唆された。マウスの発現量に比べてヒトのMDR1は3分の1、BCRPは2倍であったことから、ヒトの血液脳関門におけるMDR1の働きはマウスよりも低いが、BCRPの寄与は無視できないことが示唆された。ヒト単離脳毛細血管を用いて、さらに、仮想MRM法を用いて解析を行ったところ、これまでマウスやヒトで発現が報告されていない2種類の輸送担体の発現が示唆された。ヒトin vitro BBBモデルとして有用なヒト不死化脳毛細血管内皮細胞(D3)を用いて、仮想MRM法を用いて全てのSLC transporterの発現解析を行ったところ、11種類の機能未知の輸送担体の発現が示唆された。これらの中から、発現量の多い2種類について遺伝子発現系を構築した。一方は、mRNAと蛋白の発現量が認められ、輸送機能の解明に用いることができる準備が整ったが、他方はmRNAのみの発現であり、発現系の再構築が必要になった。
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