研究課題
多細胞生物には、臓器や形態の形成に係わる細胞と体内を自由に動き回る造血系の細胞が存在する。前者は、細胞間マトリックスを足場(接着)にして増える。増殖刺激下で足場を除くと細胞はG1期に停止し細胞死に至る。一方、造血系細胞は足場がない状態で増殖できるが、サイトカインを除くと同様にG1期に停止し細胞死に至る。足場非依存性増殖を行う細胞には、造血系細胞以外に癌細胞がある。本研究では、臓器・形態形成に必須な間質系細胞の足場依存性増殖機構と造血系細胞の増殖ならびに癌化の根底となる足場非依存性増殖機構を包括的に解明し、臓器や形態の形成の制御機構と発癌機構の全貌の解明に迫ることを本研究の目的としている。本年度は、これまでに見出していた足場消失による複製開始因子Cdc6のタンパク分解制御に関して重要な新知見が得られた。ラット線維芽細胞株NRKと異なり、マウスやラットの胎性線維芽細胞では、主に、ユビキチン依存性分解系によって足場消失に伴うG1期停止時にCdc6の分解が起こること、その時に働くユビキチンリガーゼは従来から知られているCdh1-APCと未同定のリガーゼであることが明らかとなった。加えて、足場消失に伴うCdh1-APCの活性化にはp53がん抑制因子が関与していること、更に、NRK細胞では、CKIの存在下でも活性抑制が起きないCdc6-サイクリンD3複合体の強制発現とCdc6の強制発現を行うと、アポトーシスを阻害した条件で緩やかではあるが足場非依存性増殖を行うことができることを見出した。
すべて 2006
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