研究概要 |
平成9年から2年ごとに継続して実施している無作為抽出された約2,400名の中高年地域住民を対象にしたコホート調査の結果を用いて、中高年者のこころの健康についての学際的研究を行った。 1. データ収集及びモノグラフの作成 平成20年度に開始した第7次調査を今年度も継続して実施し、平成22年7月に終了した。引き続いて第7次調査を開始し、平成23年3月末現在838名の調査が終えた。終了した第6次調査の参加者2,302名のデータ照合、確認を行い、一般成人知能検査(WAIS-R)、簡易認知機能検査(MMSE)、記銘力検査、頭部MRI検査、各種背景要因などについてモノグラフとしてインターネット上に公開した。 2. 研究成果 14年間にわたって蓄積されたデータを用いて、中高年者におけるこころの健康についての解析を実施した。今年度は前年度に引き続いて知能の加齢変化についての縦断的検討を行った。知識一般的事実や語彙などの知識量は、60歳代まで向上し、70歳代でも維持されていた。情報処理の能力は、50歳代まで向上するが、70歳代では低下していた。知能の側面によって、各年代における経時変化の様相は異なることが示された。WAIS-Rの数唱を用いて短時間記銘力の縦断的変化について検討した。数唱の点数は年代によって異なり、4年間での変化は40歳代、50歳代、60歳代では有意でなかったが、70歳代では4年間でも有意に低下していた。アミノ酸摂取と抑うつとの関連を明らかにした。摂取アミノ酸の中でグリシン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンが、抑うつのない中高年男性の2年後の抑うつ有のオッズを半分以下に抑えていた。生活要因が主観的幸福感に与える影響についても明らかにした。ライフイベントや日常の苛立ち事は、その後の主観的幸福感に影響を与えていたが、その様相は性、年代で大きく異なっていた。
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