糖尿病患者・肥満患者の肝臓を大規模かつ包括的に解析し、世界最大のヒト肝臓における系統的で包括的な発現遺伝子・タンパク情報を整備してきた。ヒトおよび実験動物を用いて検討した。肝臓における病態を解明した。糖尿病、脂質異常症、肥満症の肝臓において糖・タンパク・脂質・エネルギー代謝が大きく変動していることを示し、その変動がもたらす全身への影響から、こうした病態を新たな肝臓病としてとらえることの重要性を示した。脂肪肝においては体重を低下させることにより血糖値のコントロールが脂肪性肝炎への進展を押さえることを明らかにした(Diabeties Care)。肝臓における脂肪酸の変動とインスリン抵抗性および病理組織像との関連を検討した。血液を用いることによって糖尿病の発症予知、コントロールを測定できること、免疫能の低下を検出できることを示した(Diabetes)。脂肪性肝炎が関連する肝細胞がんの発症にインスリン抵抗性が関連することを研究した。さらに、脂肪組織からアディボカインが放出されるように、肝臓からセレノプロテインPが血液中に放出され、糖尿病を悪化させることを世界ではじめて示した。このような肝臓が産生するタンパクをヘバトカイン(hepatokine)と銘々した(Cell Metabolism)。即ち、糖尿病など栄養状態が関与する症候群に対する戦略をたてるうえで、こうした肝臓の状態を明確にとらえ、ヘバトカインに対する基盤的な研究を行うことが重要であることを示した。
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