研究課題
骨形成のメカニズムとしてのニッチには、骨髄細胞並びに内骨膜の中に存在する骨芽細胞の前駆細胞が存在することが推察されているが、その実態や制御のメカニズムは不明である。本年、副甲状腺ホルモン受容体の構成的活性化変異を持つヒトH223R型の変異蛋白を骨芽細胞特異的にI型コラーゲンのプロモーターによって強制発現したマウスを用い、そのニッチにおける分子としての機能が推察されているオステオポンチンの役割を検討した。骨髄の細胞の形態学的な観察により、通常は造血系の単核のヘマトキシリン好性の細胞の存在する骨髄は、副甲状腺ホルモン受容体の活性型変異のマウス(PPRtg)においては間質細胞が優勢となる。一方、オステオポンチンの欠失が起こるとこの細胞は更にその増加がみられ、その結果アルカリフォスファターゼ陽性の多数の細胞群が骨髄内に増加した。三次元マイクロCTを用いた海綿骨の骨量の解析の結果、PPRtgによって増加するBV/TVは顕著に増加するが、OPNの欠失状態では、その増加は「更に」促進された。骨形成マーカーである骨形成率あるいは石灰化速度更には骨形成表面のいずれのパラメーターもPPRtgによって増加すると共にまた、骨形成速度についてPPRtgとOPN欠失の両条件の共存の際に更に高いレベルの亢進が観察された。全身性のアルカリフォスファターゼの血中レベル更にはオステオカルシン血中レベルもこれに対応し、PPRtgによる増加に加え、OPNの欠失により、高いレベルの増加が見られ、このことから全身性の骨形成の亢進が顕著であることが明らかになった。このことは骨髄細胞を培養し石灰化させた場合にも更に著明に認められ、即ち骨髄内に存在する骨芽細胞の前駆細胞は、生体外に取り出し培養した場合に起こる石灰化結節の形成がPPRtgにより促進されるばかりでなく、オステオポンチンの欠失により細胞のautonomousな機能として抑制が外れることにより、顕著な促進を起こすことが明らかとなった。これに対してMTTアッセイの如く、細胞の増殖に対してはこれらの変化は見られないことから、分化に特異的な作用であることが推察された。両者の作用は同時にまた破骨細胞においても見られ、PPRtgによって増加する破骨細胞数はOPNの欠失により更に増加した。このような破骨細胞の形成そのものはin vitroの培養条件では明確な差が認められず、cell autonomousというよりは細胞環境によるものであることが推察された。転写レベルの活性の制御の検討によれば、CREのシグナルに対するPPRの作用の有無によらず、OPNに対するsiRNAの機能は明確に見られた。この条件下でMC3T3を用いた実験により、オステオポンチンシグナルとPPRシグナルが転写レベルで相互作用することが明らかになった。以上の結果から全身性の制御におけるオステオポンチンのニッチにおける分子としての役割が明らかとなった。
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