研究課題
骨形成のメカニズムにおいては骨芽細胞分化と増殖の機能制御を主要な制御対象としたが、これまで骨芽細胞における制御の分子として循環系の分子についての存在が明らかにされていなかったことから今年度の研究においてレニン、アンジオテンシン:システムが骨において機能するか否かを解析した。この結果まず骨芽細胞におけるアンジオテンシン受容体のAT1および受容体AT2の発現が確認された。更に骨髄におけるアンジオテンシンコンバーティングエンザイムの発現が見出された。組織学の検討によりAT1は骨芽細胞に発現すると共にAT2と共に破骨細胞においても発現しており、この点から骨芽細胞、破骨細胞の両者はAT1、AT2の両者を発現することが明らかとなった。次にAT2のブロッカーおよびAT1のブロッカーも作用を検討すると、全般的な骨増加が明らかとなった。このアンジオテンシン受容体AT2の2型(AT2)のブロッキングを行うと、骨形成量が増加した。更に吸収の面での低下にもAT2のブロッカーの作用が明らかとなった。このような阻害剤による実験のみでなく、AT2のノックアウトマウスを用いた解析からも骨量増加および骨梁幅の増加が明らかとなったことから、骨の量の決定においてはこれまでの骨特異的な成長因子やホルモンのみならず、神経系と共に作用する循環系の分子の存在が重要な働きを持つことが明らかとなった。これに加え、骨の低下をもたらす責任細胞である破骨細胞の分化においてはエピジェネティックな作用を起こす物質であるmicroRNAの機能が重要であることをダイサー(Dicer)の破骨細胞特異的ノックアウトによって明らかにした。以上の成果は本研究が目的とする骨芽細胞メカニズムとしてのニッチの分子制御と治療への応用基盤の展開研究に資するものであり、今後更に骨芽細胞破骨細胞における分子レベルの制御についても解析を行う基盤が得られた。
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