研究課題/領域番号 |
18109013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
二ノ宮 裕三 九州大学, 歯学研究科, 教授 (50076048)
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研究分担者 |
重村 憲徳 九州大学, 歯学研究科, 講師 (40336079)
吉田 竜介 九州大学, 歯学研究科, 助教 (60380705)
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キーワード | 味覚健康科学 / 遺伝子多型 / 人工味細胞 / 味覚修飾因子 / 甘味 / うま味受容体 / ホルモン / 概日リズム / 肥満 |
研究概要 |
本研究は、1)食嗜好に関与する味細胞-味神経間の特異的情報ライン形成のメカニズムの解明、2)食嗜好変化に関与する内因性物質の味覚修飾作用と、その機序の解明、3)ヒトの甘味感受性と血中レプチン濃度との連関、甘味受容体など関連分子の遺伝子多型の正常者、肥満者などでの比較、それらの相関関係の解明、さらには、4)ヒト遺伝子導入(各種味覚受容体、チャネルなど)人工味細胞の構築と受容体アミノ酸変異体の応答変異の解析を行い、食の調節情報としての味覚の受容・認知機序の解明と、肥満、高血圧などと味覚感受性の連関を解析し、味覚健康科学とも呼ぶべき新たな学問体系の創成を目指す。 本年度は、1)においては、味細胞をGFP蛍光による可視化によりGustducin発現のII型とGAD67発現のIII型に分離し、ルースパッチクランプ法で味応答を解析した。その結果、II型は予想通り甘味うま味苦味のそれぞれに応答をしめす細胞に、III型は酸味特異的なものと電解質に広く応答するものに分かれ、それらから神経への伝達機構は異なる事が示唆された。また、グルマリン感受性味細胞神経経路を遺伝的に導入したマウスでは、Gustducinと甘味受容体T1R2/T1R3の共発現率が高く、Gustducinがその甘味経路に必須であることが事が判明した。2)においては、塩味修飾物質候補としてアンギオテンシンIIの味応答への関与について検索した。その結果、アンギオテンシンII投与後、マウス鼓索神経の塩味応答の特に等張濃度付近が抑制されることを示すデータが得られた。味細胞における受容体分子の発現についてはまだ明確な結果が得られていない。3)においては、ヒト血中レプチン濃度の概日リズムが甘味物質に対する認知閾値の概日リズムと連関し、その連関は朝食や朝昼食の欠食や、健康成人で血中レプチン濃度の高いヒトで消失することが明らかになった。4)においては、HEK細胞におけるヒトT1R2/T1R3受容体の再構築系がほぼ確立され、ギムネマ酸による甘味応答の抑制とそのガンマシクロデキストリンによる抑制消去が再現された。この結果はギムネマ酸の効果が味細胞に浸透して起こるのではなく、甘味受容体に直接働いて起こっている事を示唆した。
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