研究課題
本研究は、1)食嗜好に関与する味細胞・味神経間の情報伝達とその情報ライン形成のメカニズムの解明、2)食嗜好変化に関与する内因性物質の味覚修飾作用と、その機序の解明、3)ヒトの甘味感受性と血中レプチン濃度との連関の解析、その正常者、肥満者との比較、甘味受容体など関連分子の遺伝子多型性との相関関係の解明、さらには、4)ヒト味覚受容体遺伝子導入人工味細胞の構築とアミノ酸変異体の応答解析を行い、食の調節情報としての味覚の受容・認知機序の解明と、肥満、高血圧などと味覚感受性の連関を解析し、味覚健康科学とも呼ぶべき新たな学問体系の創成を目指す。本年度の研究結果、課題1)では、甘味感受性味細胞は刺激に対して発生する活動電位によりからATPが放出されることから、II型味細胞ATPが伝達物質として働くこと、また、遺伝子マイクロアレイと発現解析により、甘味受容体発現細胞はグルマリン非感受性部位ではGalpha14と、感受性部位ではGustducinと共発現することを発見した。2)においては、アンギオテンシンIIの投与によりマウス鼓索神経の塩味応答が投与後30分で抑制するが、1時間後には逆に増大傾向を示すこと、また新たに甘味応答の増大もともなうこと、さらに、免疫組織化学検索により、AT2受容体が味細胞の一部に発現することが明らかになった。3)においては、前年度までに、ヒト血中レプチン濃度の概日リズムが甘味認知閾値の概日リズムと連関することを健康成人で発見した。本年度は肥満者の甘味閾値の日内変動が平坦化しており、リズムが消失すること、すなわち肥満の高進により、レプチンによる甘味調節系が破綻することを見出した。4)においては、HEK細胞におけるヒトT1R2/T1R3受容体の再構築系を用いた解析により、ミラクリンの酸による甘味誘導作用はT1R2の細胞外ドメインが、ギムネマ酸の甘味抑制効果にはT1R3の膜貫通領域とT1R2とT1R3のどちらかの細胞外領域が必要であることが判明した。また、ヒトT1R1/T1R3受容体の再構築にも成功し、受容体の二つのアミノ酸変異体がうま味感受性に差をもたらすことが判明した。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (29件) 図書 (4件)
Am. J. Clin. Nutr (In press)
Ann NY Acad Sci. (In press)
PloS ONE 4
ページ: e5106
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 296
ページ: R960-971
Neuroscience 159
ページ: 795-803
Biol. Pharm. Bull 31
ページ: 1833-183
Biochemical and Biophysical Research Communications 376
ページ: 504-508
DIABETES 57
ページ: 2661-2665
J Neurosci Methods. 172
ページ: 48-53