研究概要 |
本研究は、1)食嗜好に関与する味細胞-味神経間の情報伝達とその情報ライン形成のメカニズムの解明、2)食嗜好変化に関与する内因性物質の味覚修飾作用と、その機序の解明、3)ヒトの甘味感受性と血中レプチン濃度との連関の解析、その正常者、肥満者との比較、甘味受容体など関連分子の遺伝子多型性との相関関係の解明、さらには、4)ヒト味覚受容体遺伝子導入人工味細胞の構築とアミノ酸変異体の応答解析を行い、食の調節情報としての味覚の受容・認知機序の解明と、肥満、高血圧などと味覚感受性の連関を解析し、味覚健康科学とも呼ぶべき新たな学問体系の創成を目指す。 本年度の研究結果、課題1)では、Gustducin-GFP細胞では、16種のGαサブユニットのうちGα14(FF:31%、cv:73%)、Gαq(48%;68%)、Gα11(53%;73%),Gαi2(78%;96%),Gαs(72%;96%)の順に発現頻度が高かった。また、T1R3-GFP細胞でもGagust(100%;19%),Gα11(33%;57%),Gα14(11%;81%),Gαi2(67%;71%),Gαq(67%;81%),Gαs(89%;86%)の値を示し、gustducin以外にもGα11、Gα14、Gαi2、Gαs、Gαqが甘味受容に関与する可能性が示唆された。2)においては、免疫組織化学検索により、AT1受容体発現細胞のほぼ半数が、1型味細胞でENaCsと共発現し、残り半分がII型のTlr3,TRPM5と共発現すること、アンギオテンシンIIによる塩味応答抑制と甘味応答の増大は、AT1阻害剤で低下し、AT1を介するものであることが判明した。3)においては、肥満者のうま味応答閾値が健康成人より高いことから、T1rl/T1r3の2か所のアミノ酸変異との連関を調べたが、肥満者数の数が少なかったこともあり、有意な差は認められなかった。また、STC-1細胞はレプチン投与によりCa^<2+>応答し、かつ甘味応答も抑制することが判明した。4)においては、ギムネマ酸はヒトT1R3の膜貫通領域およびヒトT1R2及びT1R3の高システイン領域、点変異を用いた解析により、ギムネマ酸感受性を決定するアミノ酸変異が見出され、ヒトT1R3膜貫通ドメインモデルでのドッキングシミュレーション解析では、ギムネマ酸がヒトT1R3膜貫通ドメイン内の上記点変異を含むバインディングポケットに収まることが予測された。
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