研究概要 |
脳動脈はMRAで検出でき,そこから動脈瘤を推定することは可能である,塞栓術では脳動脈にカテーテルを通して動脈瘤の入り口からスプリングを注入して塞栓するために,動脈瘤までの経路を確保すれば良い.この問題は血管の経路探索問題であり解決した. これに対してクリッピングでは,頭蓋骨を開き,脳動脈瘤の根元にクリップを送り込む必要がある.脳表面から動脈瘤までの間には,脳,動脈,静脈,神経が存在するため,これらの障害物を変形させてクリップを送り込む空問を確保しなければならない.すなわち,上記の各組織の復元モデル化が必要となるが,静脈は時間差CTを撮ることで検出可能となる.脳本体は頭蓋骨内部の特定CT値により検出でき,神経を除き患者の頭蓋骨内部の復元が可能となった. クリップを挿入する空間確保には,動脈瘤を含む円筒領域内(ROI)の組織のみを変形の対象と見なし,この内部に含まれる組織をテトラ構造化し,それ以外の部分はサーフェイスグラフィック化することで処理の高速化を図った.すなわち,描画の対象は外部から可観測な表面のみであり,変形可能な部分に対してのみ内部構造の変形計算を行う手法を考案した.しかし,組織の切断が行われると,切断面が新たに可観測となるため処理は複雑化するが,クリッピングではそうした問題は生じない。 動脈瘤への障害物を鉗子で変形させる操作を力覚装置PHANToMで模擬することで必要な経路と空間の確保を実現した。ただし、術具で変形させた血管や脳の状態の保存には鉗子による固定が行われるが、本システムでは仮想鉗子で変形を保持するのではなく仮想鉗子固定モードを選択することで変形状態の保存を行うことにした。
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