研究概要 |
平成19年度は,シナリオに基づくエージェントモデルの構築について研究・実装を行った. ここで構築するモデルは,記述されたシナリオの下で,環境に適応して行動を選択するエージェントの動作メカニズムと定義できる.エージェントモデルは,参加型シミュレーションを通して得られたデータ,および被験者のインタビュー結果を基に得られる.重要なのは,エージェントモデルが,大量のデータではなく,少量のデータに対して仮説推論を適用して得られる手法を提案した点にある. 本年度は,交通のドメインに着目し,提案手法に基づくモデル構築を行った. 交通シミュレーションの既存研究の多くは,均質な運転者モデルを仮定しており,交通流を構成する人員の性質の変化が交通流に与える影響を検証できない.本年度の研究では,高齢化社会における交通流の再現を目標に,年齢に基づいて高齢者・若齢者にクラス分けされた個々の運転者モデルの取得を行った.具体的には以下の手続きに従い,モデル構築を行った. 1)参加型ドライビングシミュレーション:被験者が車両を操作し,仮想空間上の道路を走行する,参加型のドライビングシミュレーションを実施する 2)被験者へのインタビュー:被験者の操作画面を録画した動画や速度などの推移図を用いてインタビューを行う 3)操作ルールの抽出:被験者へのインタビュー結果より,領域知識となる操作ルールを獲得する 4)ログデータの修正:ログデータから,操作ルールでは説明不可能な操作ログを取り除く 5)観測事象の記述:ドライビングシミュレーションのログデータから,観測事象となる振る舞いを抽出し,述語論理により記述する 6)仮説推論を用いたモデル学習:領域知識と観測事象,および操作ルールに関する仮説を用いて,被験者の振る舞いを説明する操作モデル候補を,仮説推論により獲得する 構築したモデルを交通シミュレータ上で動作させ,異なる運転挙動を再現できることを確認した.
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