上丘浅層のGABAB受容体による信号伝播の修飾機構 上丘浅層には豊富にGABAB受容体が発現しているが、その機能は明確でなかった。スライス標本で浅層ニューロンからwhole cell記録を行い、視神経を刺激し、単シナプス性のEPSPを誘発させた。そして通常の外液条件下でGABAB受容体の拮抗薬であるCGPを投与してもEPSCに何の変化も観察されなかったが、細胞外液にGabazineを投与してGABAA受容体を遮断するとEPSCは顕著に増大し、バースト状にEPSCが重畳する。そこでCGPを投与するとEPSCは顕著に増大した。以上の結果は、GABA作動性細胞の高頻度発火が起きた際にそれに伴って放出されたGABAは浅層ニューロンのGABAB受容体を活性化してバーストの持続を抑制するが低頻度の発火ではこのような現象は起きないことを示している。このように上丘浅層のGABAB受容体はフィードバック的に作用して過興奮を抑制し、反応の時間を制御していることが明らかになった。 上丘局所神経回路でのバースト発火の伝播機構 これまで、上丘スライス標本でGABAA受容体を抑制して細胞外液のMg濃度を低下させると上丘、特に中間層のニューロン群は自発的に近傍同士が同期してバースト発火するようになる。このようなバーストがどのように発生してどのように伝播するかを64チャンネル多電極によるフィールド電位記録とwhole cell記録を併用して解析した。すると、自発性バーストは浅層の深部から視神経層で最初に発生することが明らかになった。そこで浅層の深部から視神経層に多数存在するwide field vertical(WFV)細胞がその起源であることを検証した。まずWFV細胞に特異的に発現しているH電流をZDで抑制すると自発性バーストは消失した。そこでさらに1個のWFV細胞に電流通電してバースト発火を起こしたところ、一部のスライスでは広く中間層に伝播するバースト活動が誘発された。以上の結果は、WFVでの高頻度発火がより多くのpopulationのニューロンのバースト発火の起点となることが明らかになった。
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