研究課題
上丘水平断スライス標本による局所回路における興奮・抑制相互作用の解析我々が外界の視覚刺激に対して注意を向ける場合、刺激が近いもの同士は相互に注意を促進しあうのに対し、遠く離れたもの同士は抑制しあうことがよく知られている。しかし、このような「近接する刺激同士の促通作用、遠隔刺激同士の抑制作用」が中枢神経系でどのように実現されているかは明確でない。このような機構が上丘の局所神経回路内に内在しているかどうかを解明するため、マウスの上丘の浅層のみ、ないしは中間層のみを水平断で摘出したスライス標本を作成した。そして64チャンネル(8x8)の多連電極が貼り付けられている視神経が通過してくるデッシュ(MEDシステム)の上に、スライスを浅層、中間層の間に位置する視神経層側を下にして載せ、上側から1個のニューロンからwhole cell記録を行い、そして64チャンネルの様々な点からの電気刺激効果を解析した。この標本は上丘の水平断方向に展開する空間マップの構造を可能な限り損なわずに維持し、そのマップ上の1点に対する他の点からの刺激効果を解析していることになる。その結果、浅層スライスにおいてはより近い刺激部位からは興奮性の効果がより優位になるのに対し、遠い点からは抑制作用がより優位になることが明らかになった。一方で、中間層スライスでは遠い部位からの抑制は観察されなかった。従って、「近接する刺激同士の促通作用、遠隔刺激同士の抑制作用」は上丘においては浅層に特有の構造であることが明らかになった。さらに電位固定法に記録を切り替え、興奮性シナプス電流、抑制性シナプス電流それぞれの反転電位付近に電位を固定することで、興奮、抑制を切り分けて記録したところ、近傍部位の刺激では興奮、抑制の効果が重複していること、一方で抑制の効果がより広い範囲から誘発されることによって、上記の「近接する刺激同士の促通作用、遠隔刺激同士の抑制作用」が実現されていることが明らかになった。
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