研究課題
モデルマウスを用い、ヒト疾患に対する治療法を開発する場合、最も重要で、かつ解決すべき問題はヒト・マウス間における種差の存在である。この種差を解決すべき手段として、私たちは免疫不全マウスの肝臓にヒトの肝細胞を移植し、マウス体内で再構築する方法を検討した。また、モデルの樹立後には、肝臓を標的とするウイルス感染症を対象とし、それらの疾病に対する治療法の開発を通じ、その疾病の撲滅に寄与することを目的とした。上記の目的に対して、今年度は我々が開発したTRECK (Toxin-Receptor Cell Knockout)法をSCIDマウスに応用し、毒素投与によるマウスの肝実質細胞を破壊した後、そのマウスにヒト由来の臍帯血、あるいは肝実質細胞を移植することによって、マウス個体内にヒトの肝臓を構築することを試みた。その結果、移植した臍帯血由来の細胞の肝臓への生着が見られたことから、この生着細胞の性質を詳細に検討している。また、ヒト由来の肝実質細胞の移植も、現在検討中である。マウスの肝細胞死を誘導するために、肝臓特異的なプロモータであるHBXの下流に、HSV-TKをつないだコンストラクトを導入したトランスジェニック(Tg)マウスを樹立した。これにより、ガンシクロビル(GCV)を投与することによって任意の時期に肝細胞死を誘導できる。これまでに、HBX pro-HSVTK発現ベクターをSCIDマウスに導入したTgマウスの作出に成功している。得られた雌2匹、雄2匹のファウンダーマウスのうち雄は不捻性のため繁殖できなかった。これまでにおいて雌2匹から繁殖させた2系統のマウスに対するGCVの影響が調べられた。GCVは20mg/kgを週2回、3週間投与した後、肝重量を計量したところ、それぞれの系統のマウスではコントロール(wild typeマウス)の約64%まで減少したもの、約33%まで減少したものが得られた。後者の系統の方が肝細胞死を強く誘導できたためヒト肝細胞を移植した時に高置換率になることが期待される。今後、マウスを繁殖させてヒト肝細胞移植実験を行う予定である。
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