膵ランゲルハンス氏島(膵島)移植によりインスリン依存型糖尿病の治療が試みられ、その臨床例の数も増えている。膵島移植を成功させるためには種々解決しなければならない問題がある。最近の膵島移植の臨床では、経門脈的に肝臓内に膵島が移植される。このとき、膵島が血液と直接接触するため血液凝固が起こり、これにより炎症反応をはじめ種々の生体反応が引き起こされ、移植初期に多くの移植膵島が失われることが大きな問題であるとされている。本研究では、膵島が引き起こす血液凝固からスタートする一連の生体反応を防止する目的で膵島表面に線溶系酵素ウロキナーゼを固定化することを試みた。まず側鎖に長鎖のアルキル鎖とチオール基を導入したポリビニルアルコール(PVA)を合成し、これと膵島を混合することで膵島細胞とアルキル鎖の疎水相互作用でPVAを膵島表面に固定化する。その後、マレイミド基を導入したウロキナーゼを添加し、PVA上のチオール基とマレイミド基間の反応で膵島表面にウロキナーゼを固定化した。また、ビオチンーストレプトアビジンの反応を用いてもウロキナーゼを膵島表面に固定化した。その後、フィブリンプレイト法にてウロキナーゼの活性を調べたところ、両方法で固定化されたウロキナーゼは活性を維持した状態で膵島表面に固定化されていることを示すことが出来た。膵島移植を治療法として定着させるためには、膵島をストックしておく必要がある。現在までも多くの膵島の凍結保存研究が行われてきた。本研究では、新たに急速冷凍によるガラス化を導入することでマイクロカプセル化された膵島の凍結保存を成功させた。
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