研究課題
胎児大量胸水は肺低形成を、羊水過少を伴う胎児閉塞性尿路疾患は肺低形成や腎機能障害を引き起こし、ともに予後不良とされている。そこで近年ではそれらに対して超音波ガイド下胸腔羊水腔、尿路羊水腔シャント術などが行われている。しかしながら、それらの手術は子宮腔内に針を穿刺する観血的手技であり、破水や感染など相応の侵襲とリスクが避けられない。一方、HIFUはmm単位の微小な領域にエネルギーを集束させ、主に加熱作用により瞬時に局所の組織変性を惹起することができる。我々はHIFUによる人工瘻孔の形成がシャントチューブの留置に代わる腔水症・閉塞性尿路疾患の治療になる可能性があると考えた。そこでHIFUを用い胎児胸腹部に瘻孔ができるかどうかを知ることを目的に本研究を行った。妊娠25日齢のJWラビットを麻酔下で開腹し、子宮および卵膜を切開した後、胎仔外尿道口を4-0ナイロンで結紮し、子宮内に戻し卵膜、子宮を縫合後、閉腹した。妊娠28日に帝王切開術を施行し胎児を娩出し、実験に供した。出生仔を脱気水中に固定し、イメージング用プローブ(8MHz)を結合させたHIFUトランスデューサー(2.8Hz)を用い、胎児胸腹部を描写し、照射強度は8kw/cm2で、照射時間を1クール60秒として胎児胸部及び下腹部にHIFU照射を行った。胎児巨大膀胱モデルが完成した。胸部は60秒照射2クールで、下腹部は1クールでそれぞれ径1mmの瘻孔が作製できた。下腹部においては瘻孔作製直後より尿の排出が認められた。ともに出血は認められなかった。病理学的検討において瘻孔周囲には影響を認めなかった。HIFUを用いて臨床応用可能な超音波強度でラビット新生仔の胸腹部に人工瘻孔を作製することができた。本方法を胎児期に用いれば胎盤位置に左右されず、非観血的手技により胎児人工瘻孔を作製できる可能性が示され、シャント術に代わる胎児腔水症・閉塞性尿路疾患などの胎児治療に応用可能であることが示唆された。
すべて 2007
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Ultrasound Obstet Gynecol 22(5)
ページ: 358-360