研究概要 |
東南アジア大陸部に分布する諸民族グループ(タイ、ラオ、メオ、リス、アカ、ラフ、カレン、チンホー、パダウン、タイルー、ビルマ、シャン、モン)の発育榮養に関する実態の把握とそれを取り巻く生育環境の総合的な把握を目的として4年間の現地調査及びデータ解析を行った。その結果、当初は困難が予想された民族グループについてもデータ収集を行い(3万件を超える)、ほぼ目的を達することが出来た。これらデータは単に研究者が私蔵すべきものではなく、広く公開して国際協力における基礎資料として活用すべきである。こうした観点からまずは、各民族別に発達標準値の作製を行った。これによってもたらされたエヴィデンスは唯一の客観的な発育栄養判定基準となるはずである。各国政府、開発援助等機関はデータに基く栄養補給プログラムを求めているものの、こうした判定基準がないままに手探りで食糧援助や保健、栄養指導が行われてきた。 我々は、民族グループのうちタイ、ラオ、メオ、リス、アカ、ラフ、カレン、ビルマ、シャン、モンに関する発育栄養標準値をBTモデルとKL法による解析を通じて算出し各年齢、性別にパーセンタイル値(3,25,50,75,97パーセンタイル値)を求めスプライン関数で補完して平滑化した。これを実際に現場の学校や保健所、病院等で利用できるように大型のポスター(簡単なマニュアルを付加)として誰でもこの判定基準を利用できるように工夫した。今後これを現地各機関に配布する予定である。 また、既に各国でこれに関するセミナーを開催して保健、生活指導に供する試みを行っている。特にミャンマーでは全国23教育大学の全てを対象として、諸民族に関する発育栄養セミナーを開始しており、研究成果を実践的なフェーズで利用し始めている。また研究成果は、日本発育発達学会第7回大会において最優秀研究として評価されている。
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