研究概要 |
本研究は,ジャワ原人化石を多産する「世界文化遺産サンギラン遺跡」の新しい編年モデルの構築を進め,当遺跡の人類化石の評価にかかる年代学的検証を行うものである。本年度は以下の研究調査等を実施した。 1.サンギラン遺跡および関連する人類遺跡(プルニン)において野外調査を実施し,幾つかの人類化石出土地点における層序学的再検討を行った。また,サンギラン遺跡からは年代対比に資する古環境分析用の堆積物試料を採取し,分析を進めた。 2.サンギラン遺跡および関連する古人類遺跡において本研究調査で採取した数多くの地質柱状図について,その整理と取りまとめを進めた。 3.サンギラン地域の凝灰岩層の地点間対比に関するテフラ分析を追加した。また,凝灰岩試料について,特にアルゴン40/アルゴン39法による年代測定を進めた。 4.サンギラン地域のカブー層(バパン層)上部の堆積物から詳細な地磁気磁場変動を復元した。これより上位は同地域の地層の最上位まですべて正帯磁を示し,下位はカブー層下部まで逆帯磁を示すこと,また,た地場変動の方向と強度の変化が松山/ブリュンヌ地磁気逆転の特徴とよく一致することから,この逆から正への古地磁気極性境界が松山/ブリュンヌ境界に相当することが高い確度で示された。この結論は,カブー層より上の層のフィッショントラック年代値やアルゴン40/アルゴン39年代値とも整合的である。当地域におけ松山/ブリュンヌ境界の特定は,サンギラン遺跡の最上位の人類化石産出層に約78万年前という鍵値を与えるものである。 5.日本人類学会大会にて,「ジャワ原人の年代的枠組みの再構築に向けて」と題するシンポジウムを主催し,代表者おび分担者らが本研究に係る成果を発表した。
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