研究課題/領域番号 |
18200054
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
富田 正弘 富山大学, 人文学部, 教授 (50227625)
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研究分担者 |
湯山 賢一 独立法人国立博物館, 奈良国立博物館, 館長 (00300690)
永村 眞 日本女子大学, 文学部, 教授 (40107470)
綾村 宏 京都女子大学, 文学部, 教授 (20000507)
藤井 譲治 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40093306)
大藤 修 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20110075)
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キーワード | 文書料紙 / 楮紙 / 斐紙 / 竹紙 / 漉返紙 / 米粉 / 非繊維物質(不純物) / 年代判定 |
研究概要 |
この課題は、4年目の平成18年度が当初研究計画では最終年度であったが、最終年度前年度の応募で18年・19年度の2ヵ年の新計画が認められたため、合計5ヵ年のうちの4ヵ年目となったものである。 古文書等の料紙原本調査は、国内については東寺百合文書(京都府立総合資料館)・東大寺文書(東大寺図書館)・醍醐寺文書(醍醐寺)・上杉家文書(米沢市上杉博物館)・東福寺文書(東福寺)・秋田家文書(東北大学図書館)・島津家文書(東京大学史料編纂所)等について実施し、中世・近世文書料紙のデータを約5千件採取することができた。本年度の調査での研究成果として挙げられるのは、文書用料紙の中世から近世への移り変わりがほぼ明らかになったことである。公文書の最上等の料紙は鎌倉時代の檀紙から室町時代の強杉原そして秀吉政権・江戸幕府の大鷹檀紙へと移り変わるが、檀紙は不純物をよく洗って漉きあげる紙で、不純物を多く残して漉きあげる強杉原とは紙質としては連続しない。秀吉政権・江戸幕府の大鷹檀紙は紙質としては強杉原の系譜を引くものであるが、将軍家綱ごろから不純物が全くなくなるようになり、鎌倉時代の檀紙の最上等紙の引合に近いものとなる。室町時代に書札様文書に使用された杉原紙は添加物の米粉を多く入れるようになり、江戸時代には公文書の次位のランクの奉書紙に発展していく。通常の行政文書には、米粉が全く入らず不純物を多く残した美濃紙が用いられるようになるのである。 海外の文書の調査としては、韓国中央博物館の朝鮮王朝時代の公文書、沖縄県立公文書館・名瀬市(現奄美市)立奄美博物館の琉球王国の辞令書、京都大学図書館の朝鮮王朝時代の土地売買証文、東京国立博物館・九州国立博物館の幕府・琉球国往復書簡集などの料紙を調査した。琉球国王の辞令書は、16世紀のものは中国から輸入した楮紙を用いていたが、17世紀20年代の尚豊王の時代から竹紙を使用し始めることが明らかになった。一般行政の文書としては、琉球国で生産したと思われる芭蕉紙・青雁皮紙・漉返楮紙が用いられている。韓国の公文書には、中国では斐紙系統や粗末な楮紙を用いるのとは異なり、良質の楮紙を多用しているようである。 最終年度は、これらの文書調査を続行し、時代ごとの特徴をさらに詳細に述べることができるようにしていきたい。
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