研究課題
本研究では、縁辺海であるベーリング海海盆域について、基礎生産に関連する鉄・栄養塩の挙動とその起源を、北部北太平洋亜寒帯域のものと比較検討した。1、北部北太平洋亜寒帯域:特に北西部北太平洋亜寒帯域表層では、鉄及び栄養塩濃度は高く、湧昇等により表層にもたらされていると判断された。また船上培養実験においても、鉄添加したものと無添加のものとでは、培養期間中ほぼ同程度の増殖を示し、増殖に必要な鉄及び栄養塩が十分あることが示された。しかし、鉄を生物が利用出来ない形態にした培養では、ほとんど増殖出来ず、現場には生物利用可能な鉄の存在が明らかとなった。このことにより、この海域における基礎生産を支える鉄及び栄養塩の起源は、湧昇による表層への供給と考えられ、表層の鉄は生物利用可能であることが判った。2、南部及び中央部ベーリング海海盆域:今までの夏季観測において南部ベーリング海海盆域表層では、栄養塩は豊富に存在しているが鉄濃度が低いため、クロロフィルa濃度が低く抑えられている鉄欠乏型低クロロフィル(HNLC)海域であることが明らかになっている。しかし,今年度6月のベーリング海海盆域観測では、表層クロロフィルa濃度は高く、海盆域での冬季鉛直混合後の春季植物プランクトンブルーム後期をとらえているものと推察した。今年度のベーリング海表層水温はいつもの同時期に比べ低く、ブルームが遅れていると判断された。ベーリング海盆域では冬季鉛直混合により、鉄及び栄養塩が表層に供給され、下層からの供給が春季ブルームを発生させる大きな要因と考えられる。しかし、夏季には鉄が栄養塩より先に植物プランクトンに消費されるため、鉄欠乏型HNLC海域になると推察される。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件)
Journal of Experimental Marine Biology and Ecology 382
ページ: 108-116
Deep-Sea Research, Part II (掲載確定)
Journal of Geophysical Research 114,C08019
ページ: doi:10.1029/2008JC004754