研究分担者 |
中塚 武 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (60242880)
西岡 純 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (90371533)
三寺 史夫 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20360943)
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (30185251)
中村 知裕 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (60400008)
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研究概要 |
オホーツク海北西陸棚域は海氷生産量が非常に大きく,北太平洋表層で一番密度の大きい水が作られる.この高密度陸棚水は北太平洋中層に潜り込み,北太平洋スケールでのオーバーターン(大きな鉛直循環)の源となっている.観測データの解析から,この50年間にオホーツク海を起源に北太平洋北西部の中層水が昇温し,オーバーターンが弱化していることが示された. 西部オホーツク海,千島海峡および親潮域において,微量栄養物質(鉄)や栄養塩の動態を把握するための海洋観測を行った。その結果,オホーツク海南部や親潮域で見られる中層における鉄などの物質濃度の極大が,アムール川から流出した陸起源物質に由来するものであることを初めて明らかにした.オホーツク海北西部陸棚域底層に存在する高密度陸棚水には,大陸棚起源の鉄が高濃度で含まれており,中層水の循環によって,オホーツク海大陸棚の鉄が北太平洋まで移送されていることが示唆された. アムール川からの微量栄養物質の輸送・混合プロセスを解明するため,アムール湾からサハリン湾にかけての領域における潮汐混合について鉛直2次元非静水圧モデルを用いて調べた.その結果,アムール湾とサハリン湾の間のシルでは成層が破壊されるほど強い鉛直混合が起こりうることが分かった.このことは海底に堆積された栄養物質も潮流により巻き上げられ,海面に至るまで混合されうることを示唆している. オホーツク海と親潮域間の海水交換・物質交換に重要な千島海盆の変動を,衛星海面高度計データとオホーツク海循環モデルを用いて調べた,千島列島沿いの変動は海水の熱膨張によって説明されるが,海盆内部の変動は,熱膨張の他に,オホーツク海全体の風成循環の影響が地形に捕捉されて強く出ること,東樺太海流が海盆内に侵入する際に生ずる再循環が年周期変動をすること,という力学的メカニズムも加わった複雑な現象であることが明らかとなった.
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