研究概要 |
平成20年度は、平成19年度より継続して、東京湾湾央部水深20mの1地点において未撹乱堆積物コアを採取し、NA-SOB(細胞内に硝酸態窒素(N0_3^-)を高濃度に蓄積するイオウ酸化細菌)のbiomass、NA-SOBの細胞内に蓄積されているNO_3^-のpool size、ΣH_2S濃度、pH、形態別のFe濃度(Porewater-Fe^<2+>,CaCl_2-extractable-Fe(II),Ascorbate-extractable-Fe(III),HCl-extractable-Fe(II),HCl-extractable-Fe(III),Oxalate-extractable-Fe(II),Oxalate-extractable-Fe(III),Dithionite-extractable-Fe(III))の鉛直プロファイルを、1〜2ヶ月に1回の頻度で測定した。堆積物表層のΣH_2Sが存在していない層(Sulfide Free Zone,SFZ)は、2月には20-30mmの深さまで形成されていたが、4月中旬には完全に消失し、ΣH_2Sは堆積物表面直下から増加していた。SFZが存在しない状態は、NA-SOBのbiomassが増加する10月中旬まで継続した。pHの鉛直プロファイルは著しい季節変化を示し、形態別のFe濃度の鉛直プロファイルの季節変化と重ね合わせて考察すると、堆積物からのΣH_2Sの溶出抑制機構として、以下の過程が考えられた。1)底層水の溶存酸素濃度が高い冬季:Feによる化学的固定、2)貧〜無酸素化している春季〜夏季:酸素(一時的にはFe及びNA-SOB)、3)底層水のN0_3^-濃度が上昇する秋季の初期:NA-SOBによる生物学的酸化、4)底層水の酸素濃度が上昇する秋季の終期:未知の過程(電気化学的過程?)。これらの機構を解析するために、実験的に構築した堆積物コアによる培養実験系を用いて季節変化の再現を試みたが、成功しなかった。
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