研究課題
ヒトゲノムは、絶えず内因性、外因性の遺伝毒性物質に曝露されており、損傷を持ったDNAを鋳型にして行われるDNA複製は突然変異や染色体異常を誘発する。DNA損傷に基づく遺伝毒性を回避するため、ヒト細胞にはDNA損傷部位を乗り越えて複製を続ける特殊なDNAポリメラーゼが備わっている。このDNA損傷部位を乗り越えて進むDNA合成はトランスリージョンDNA合成(TLS)と呼ばれ、TLSに特化したDNAポリメラーゼはTLS型DNAポリメラーゼと呼ばれる。本研究では、ヒトTLS型DNAポリメラーゼの一つであるDNAポリメラーゼκ(hPolκ)の生化学的解析を進めるとともに、同酵素の活性を特異的に不活化させたノックインマウスおよびノックインヒト細胞株を樹立することにより、低用量域での遺伝毒性発がん物質の閾値形成にTLSがどのように関与するかを明らかにすることを目的としている。平成19年度は(1)hPolκのtyrosine 112をalanineに置換した変異体(Y112A)の性状解析を継続し、Y112Aではミスマッチ末端からのプライマー鎖伸長活性が著しく減弱していることを明らかにした。Y112A変異蛋白質はbenzo[a]pyrene diolepoxide(BPDE)adductを持つDNAに対して野生型hPolκと同様の強さで結合し、鋳型鎖上のBPDEを乗り越える活性も野生型とほぼ同様であった。以上の結果から、hPolκのY112は、BPDE adductに代表されるguanine N2 adductのTLSよりも、ミスマッチ末端からの伸長反応において重要な役割をはたしているものと結論した。(2)Polκの198番目のaspartic acid(D198)と199番目のglutamic acid(El99)をalanineに置換したノックインマウス(D198A/E199A)のヘテロ体同士を交配してホモ体を得た。ホモ体において変異蛋白質が野生型マウスと同レベルで発現していることをウェスタンブロット法にて確認した。(3)ヒト細胞株Nalm-6のhPolκ遺伝子(POLK)を完全欠失させた変異株とhPolκにD198A/El99A変異を導入した株を樹立した。
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