研究概要 |
平成18年度は,水熱ナノプロセスによるリサイクル・資源回収技術の体系化と集大成を目指し,以下のようなテーマに関してそれぞれ検討し成果を得,その二部を学術雑誌へ投稿し,掲載された. 1.超硬合金からのWの回収 近年高騰を続けるWを大量消費する材料の一つであるWC-Co超硬工具からWを一次原料として利用可能な三酸化タングステンとして回収するために,硝酸を酸化剤とした水熱処理を試みた.その結果,硝酸の濃度と温度を最適化することにより,純度99%以上の三酸化タングステンを高収率で回収できることが明らかとなった.また,フッ化水素酸を適量添加した処理により,WC骨材粒子の粒径やCo添加量の違う工具,特性制御助剤の添加された工具,酸化等防止用表面コーティングを施された工具を処理した場合であっても,高収率かつ高純度でWを三酸化タングステン粉末として回収可能であることを明らかにした. 2.廃水中の硫酸ジルコニウムを利用した材料合成 これまでの研究成果としてPZT焼結体からの湿式ボールミルによる鉛の回収で得られるZrの硫酸塩を含む廃水の処理のため,リン酸存在下での水熱合成を行ったところ,廃水中のZrを吸着剤などに利用可能な材料であるリン酸ジルコニウムとして回収可能であることを明らかにした. 3.水からのフッ素,ホウフッ化物,ヒ素,アンチモンの資源として分離回収と資源化 水熱鉱化廃水処理法により,フッ素,ホウフッ化物,ヒ素,アンチモンをアニオンとして含む廃水の処理を試みた.その結果,フッ素は蛍石,ホウフッ化物はパラシビルスカイトと蛍石,ヒ素はヒ素アパタイト,アンチモンはアンチモン酸カルシウムといった天然で産出される鉱物として回収可能であるとともに,処理後の廃水中の各元素濃度を水質汚濁防止法により規定されている排水基準値以下に低減し,無害化できることを明らかにした. 4.部分安定化ジルコニア焼結体の水熱解砕と再利用の可能性 部分安定化ジルコニア焼結体が示す"低温劣化現象"を逆手に利用して,水熱処理をすることにより高強度を誇る部分安定化ジルコニア焼結体構造材料からの骨材回収を検討した.その結果,水熱処理により安定化材として添加されているイットリウムを溶出させることなく,骨材を回収できることを明らかにした.さらにこの回収骨材を用いて再度焼結体の作製を行ったところ,多少の前処理条件は必要なものの新品と同等の性能の焼結体が作製できることを明らかにした.
|