鉄-ポルフィリン触媒の自己分解の抑制とクロロフェノール(CPs)のような有機基質の酸化活性の向上を目的として、この触媒の共有結合による腐植酸への導入に関して検討を行った。鉄-ヒドロキシフェニルポルフィリン触媒を腐植酸へ共有結合で導入する手段として、アルカリ触媒共存下でホルムアルデヒドを用いた架橋反応が有用であることを見出した。この反応では、触媒中のヒドロキシフェニル基と腐植酸中のフェノール部位が架橋する。まず、ヒドロキシフェニル基を1つだけ有する触媒を合成し、腐植酸へ架橋させた。さらに、ヒドロキシフェニル基を4つ有する触媒に関しても、腐植酸へ導入した。これら触媒を比較すると、ヒドロキシフェニル基が多い方が触媒の自己分解に対する抑制効果が大きく現れ、CPsに対する分解率の向上にも有効であることが明らかになった。これは、ヒドロキシフェニル基4つの触媒の方が安定であり、その自己分解が抑制されることから失活し難くなることに起因する。特に、ヒドロキシフェニル基4点で架橋した触媒は、元の鉄-ポルフィリン触媒に比べCO2への無機化率が12-13%も向上し大きな効果が見られた。また、鉄-ヒドロキシフェニルポルフィリン触媒をアルキル鎖でエーテル結合を介して腐植酸と共有結合させることについても検討を行った。その結果、腐植酸のカルボキシル基の酸解離をエステル化によりマスクすれば、触媒をエーテル結合で腐植酸へ導入できることを明らかにした。
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