本申請者のグループは、「サイズ選択光エッチング法」という独自の半導体超微粒子の粒子サイズ調整法を開発しており、半導体超微粒子の伝導帯下端と価電子帯上端のエネルギー位置を数ミリボルト間隔で変化させることができる。これと、レドックス種によるバンドギャプ蛍光の消光挙動を利用して、半導体量子ドットを用いた新規なオプティカル電気化学測定法を開発することが、本研究の目的である。本年度は、以下の研究成果を得た。 1.量子ドットとレドックス種間の電子移動反応 量子ドットを分散させた溶液に、種々のレドックス種を溶解することで蛍光強度変化を調べた。その結果、キノン類、ビオロゲン類、アクリジン類が消光作用を示すこと、ならびに、H_2O_2やNADHなど、生体反応に関連する物質も消光を行うことを見出した。それらの種のレドックス電位と濃度による消光の度合いを調査することにより、両者にマーカスの理論が適用できることが解った。さらに、マーカスの逆転領域の発現を示唆する結果も得た。 2.H_2O_2を利用したバイオセンシング 量子ドットをグルコースオキシダーゼを組み合わせ、グルコースを溶解して量子ドットの蛍光強度変化を測定した。グルコース濃度が高くなるにつれて、グルコースオキシダーゼによる反応でH_2O_2が生成し、その結果量子ドットの蛍光強度が減少することを見出した。すなわち、オプティカルバイオセンシング測定を行うことのできる可能性を見出した。さらに、量子ドットとグルコースオキシダーゼを固定する方法も開発した。 3.量子ドットを色素として用いた色素増感太陽電池への展開 半導体電極表面に量子ドットを増感剤として吸着させると、色素増感太陽電池として動作することを明らかにした。この結果を基に、量子ドットと電極間の電子移動を促進させ、太陽電池の変換効率の向上を図った。
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