ナノスケール層状物質を単層あるいは数層の薄膜に剥離して電極を作製することで、移動度の高い低次元伝導システムとなる。各層は原子スケール厚であり、この高い移動度を有する系では電気伝導がコヒーレントであることが期待される。これを実証するために、炭素系層状物質であるグラファイトを剥離して単層あるいは少数層の炭素超薄膜伝導システムの構築を試みた。SiO_2基板上にグラファイトを押しつけて薄膜を剥ぎ取り、光学顕微鏡観察によって特に薄い膜を選び出し、微細加工によって電極を作製した。まず、この光学顕微鏡観察において、従来の経験則に強く依存した原子薄膜枚数決定法に対して、CCDシステムを導入して機械的に確実に枚数を確定できる方法を確立した。これはSiO_2/Siでのグリーン光の反射強度をCCDで検出して数値化することで、SiO_2/Si上のグラフェン薄膜での光反射強度の低下を精密に再現性よく検出することで実現した。グラフェン1枚増えるごとに、おおよそ8%の光が減衰する。この方法によって、1層もしくは2層のグラフェンを効率的に集めて、研究を進めることに成功した。この総数決定は、前年度の炭素超薄膜の層間方向の電場遮蔽長の推定結果(1.2nm)を基として、電気伝導のゲート変調可能な膜厚である。このグラフェンの膜厚方向に強電界を印加すると、2層グラフェンに限って抵抗の指数関数的な増大が起こることを見出した。この抵抗増大は、元来ゼロギャップ半導体であるグラフェンにバンドギャップが導入されたことを示唆し、今後のグラフェンエレクトロニクスヘの展開を示している。今後、更なる特性の解明を進めて、エレクトロニクス応用などへの模索を試みる。
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