研究概要 |
我が国を含む東アジア地域には,数多くの活火山が分布する.毎年そのいくつかは噴火し,場合によっては大きな災害を引き起こす.しかしながら,観測システムの整備は進んでおらず,これらの火山を常時観測システムは一部を除き皆無に近い状態にある.このような背景から,本研究は東アジアにおける噴火監視と防災の基礎となる噴火データ収集を行うために,「複数の衛星を利用した準リアルタイム東アジア火山観測システム」の構築を目指している.これまでに,「MODISデータ処理システム」および「MTSATデータ処理システム」を立ち上げることができた.とくにMTSATに関しては,独自に受信設備を設置・運用することでリアルタイム性の高いシステムを構築することができた.これらのデータの解析結果に関しては,Webサイト(http://vrsserv.eri.u-tokyo.ac.jp/REALVOLC)を通じて広く公開している.本年度は,MTSATの処理ソフトのバージョンを上げることにより,幾何補正の不具合をある程度解消することに成功した.これまでの運用において問題は発生していない.一方,得られたデータの解析も進めつつあり,2006年末〜2007年にかけてカムチャツカ半島のクリチェフスコイ,シヴェルチ,カリムスキーで同時噴火・活動活発化が起きていることをMODISのデータから見出し,その時期や活動状況の確認を行った.また,MTSATの観測から,これらは24時間間隔で噴火したこともわかった.この同時噴火・活発化のメカニズムを調べるため,「だいち」のSAR画像の干渉解析を行ったが,積雪の影響が強く,結果を得ることができなかった.一方,衛星画像により活火山のデータベース化も進め,千島諸島南部に分布する主要活火山の地質判読を行い,地質図と形成史の推定を行った.
|