研究概要 |
我が国を含む東アジア地域には,数多くの活火山が分布するが,観測システムの整備は進んでおらず,これらの火山を常時観測システムは一部を除き皆無に近い状態にある。このような背景から,本研究は東アジアにおける噴火監視と防災の基礎となる噴火データ収集を行うために,「複数の衛星を利用した準リアルタイム東アジア火山観測システム」の構築を目指している.これまでに,「MODISデータ処理システム」および「MTSATデータ処理システム」を立ち上げることができた.とくにMTSATに関しては,独自に受信設備を設置・運用することでリアルタイム性の高いシステムを構築することができた.これらのデータの解析結果に関しては,Webサイト(http://vrsserv.eri.u-tokyo.ac.jp/REALVOLC)を通じて広く公開している.本年度は,システム開発のみならず,期間中に発生した実際の噴火事例の解析にも取り組んだ.2009年2月に発生した浅間火山の噴火では,観測システムで収集したMTSAT画像を利用して,噴煙の移動状況を解析し,噴煙移動方向の伸張が,先端部と終端部の速度が2倍程度異なるために起きていることを明らかにし,これは高度による風速の違いで説明できることを示した.また,同年6月に発生したサリチェフ火山の噴火について,MTSATR画像を利用してプリニー式噴煙の発生状況とその到達高度,MODIS赤外画像により活動レベルの時間変化の推定を行い,噴火推移を明らかにした.このような試みを通じて,複数衛星を利用した噴火推移プロセス解析手法開発の取り組みを進めた.
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