研究概要 |
我が国を含む東アジアには多数の活火山が分布するが,毎年そのいくつかは噴火し,場合によっては周辺に甚大な被害を与える.しかしながら,これらの火山を常時観測システムは一部を除き皆無に近い状態にある.このような背景から,東アジアにおける噴火監視と防災の基礎となる噴火データ収集を行うために,「複数の衛星を利用した準リアルタイム東アジア火山観測システム」の構築を目指して研究を進めてきた.これまでに,「MODISデータ処理システム」および「MTSATデータ処理システム」を立ち上げることができた.これらのデータの解析結果に関しては,Webサイト(http://vrsserv.eri.u-tokyo.ac.jp/REALVOLC)を通じて広く公開している.また,衛星による観測とリンクして,異常が見つかった場合,現地担当者が即座に火砕流の到達域を予測できるように,エネルギーコーンモデルを利用した「シミュレーションツール」をWeb上に構築した.2011年の新萌岳噴火の際は,MTSATとMODISを使って噴火推移の観測を行うと共に,このシステムを利用して,火砕流到達予測域図を作成し,火山噴火予知連に報告した.このような防災面でのシステムの実利用も試みた.2014年度に我が国から,次世代中分解能型衛星GCOM-C1が打ち上げられることになっている.GCOM-C1にはSGLIと呼ばれる新センサーが搭載されており,250mというこれまでにない高分解能で赤外観測を行うことができる.このために,火山の熱源のタイプを識別するなど,新しい観測が実現できる可能性がある.このための基礎研究をJAXAと共同で進めた.
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