研究課題/領域番号 |
18201036
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷 誠 京都大学, 農学研究科, 教授 (00314245)
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研究分担者 |
サイドル ロイ 京都大学, 防災研究所, 教授 (30359781)
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
小杉 賢一朗 京都大学, 農学研究科, 助教 (30263130)
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60237071)
細田 育広 森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (60353843)
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キーワード | 自然災害 / 洪水 / 水資源 / 水循環 / 地球観測 / 渇水 / 土壌 / 森林 |
研究概要 |
基岩-土壌-植生-大気連続系モデルの開発に必要な、蒸発散や斜面における観測に取り組んだ。蒸発散については、タワーの微気象観測から求められた季節変化を流域水収支から短期水収支法で得られた変化によって検証するとともに、ヒノキ林が成長することによっても蒸発散が変化しない結果を得た。風化花崗岩の斜面の地中における水流動に関しては、昨年度実施できず懸案になっていた降雨時観測を実施して、基岩からの流出量の寄与の大きさを定量的に明らかにすることができた。また、基岩内の地下水位が夏の長期降雨によって大きく変動すること、シリカ濃度が土壌水の影響を受けて低下するが、地下水位が下降した後も数ヶ月にわたって低濃度が持続することがわかった。このことは、基岩地下水の動態を2〜3次元的に把握する必要性を示しており、土壌・基岩を通じた水流動のモデル化のために、次年度からより詳細な観測展開を行うことにしたい。堆積岩山地での流出機構に関しては、斜面2カ所での土壌水分量と地下水位の変化から、場所毎の大きな貯留変動に大きな差があることが示された。なお、観測試験地のある岡山県では年後半の降水が少なく、貴重な渇水時のデータが得られたが、次年度に、降雨の多い場合のデータ把握に努める必要が指摘できる。 また、土壌の下側に透水性基岩のある花崗岩の場合、基岩への鉛直浸透流が土壌の厚さの大きい場合に増加し、このことが安定した流出変動の原因になっていること、堆積岩において透水性の大きい森林土壌が薄い場合、下層土だけでは流出変動がきわめてはげしくなることなどが示された。このことから、土壌・基岩の相互作用のモデルでの取り扱いが重要であることが明らかになった。したがって、未観測流域にも適用可能な連続系モデルの開発に関しては、土壌及び基岩で構成される各透水層の流出に対する地形条件や土壌物理条件の影響、両透水層の相互作用の両方が的確に組み込まれなければならないことがわかった。これらのことから、流出応答の再現力の高いHYCYMODELのパラメータに、観測結果から得られてきた知見を取り込めるようにもってゆく方針が立てられた。
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