本研究課題は、沿岸海域の生態系機能(生産性、安定性、物質循環など)に多大な影響を与える景観形成種(サンゴ、海草、マングローブ、海産無脊椎動物)を対象に、メタ個体群の広域変動様式および変動機構を解明することにより、保全に対する指針を作成することを目的とする。この目的を達成するため、生態学、分子生物学、海洋工学、地理情報学の各分野の最先端の理論・方法論・技術を統合的に利用する。異なる気候帯(温帯、亜熱帯)および地理的条件(外洋系、内湾系)に生息する複数の種を解析比較することにより、沿岸開放個体群の一般性、特異性を明らかにする。 具体的には、以下の課題について研究を行う。 (1)広域かつ長期にわたる野外調査により、海洋個体群の定期モニタリングを行い、個体群変動の時空間的同調性、および変動様式に対する異なる空間スケールの相対的重要性を明らかにする。 (2)リモートセンシング(RS)(衛星情報、航空写真等)を用いて、景観形成種および関連する海洋環境条件の長期広域動態を解析する。 (3)分子生態学的手法により、メタ個体群の遺伝構造、各局所個体群の遺伝的多様性、および局所個体群間の遺伝子流動の様式を把握する。 (4)空間スケールを考慮した大規模海水流動シミュレーションにより、景観形成種の局所個体群間の分散過程および交流機構を推定する。 (5)以上の結果を元に、沿岸生態系の保全に関する一般的・個別的指針を作成する。
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