本年度は、国内においては沖縄県(金武町・那覇市・宮古市・多良間村と慶良間諸島の渡嘉敷・座間見)における(1)戦前と戦後の連続性、(2)民俗と現代の関係、(3)戦没者慰霊という近現代的事象における宗教性を軸に、戦争紀念碑・慰霊碑・墓の悉皆調査と聞き取り調査及び文書資料の収集を行った。国外では、日本の戦没者慰霊についての国際的位置を明確にすることと戦没者慰霊の世界的ありかた(国家・社会・宗教・伝統)を見ていくために、ドイツ・スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・ギリシャ・フランス・イタリアとトルコ・キプロスで、戦争紀念碑と慰霊碑、軍人墓地・戦没者墓地を中心に、さらに比較研究のための資料収集として一般人の墓地とを悉皆調査を行った。特に、フランスとイタリアでは墓地以外(旧庁舎・駅舎・教会等)における戦没者慰霊と顕彰碑や村の戦争紀念碑を、キプロスでは戦争と国家の過去と現在との連続性における政治性を、トルコでは宗教と国家を顕すものとしての戦争紀念碑と軍人墓地を悉皆調査した。さらに、昨年に続いて戦歿者の墓地を管理するとともに国家的慰霊事業に参画し、且つ若者を中心に平和教育を行っているドイツ戦歿者慰霊協会において、ドイツにおける戦没者慰霊の制度・運営に関する実態を調査(ディスカッション形式)すると共に多くのドイツ戦殻者墓地に関する情報の提供を受け、同協会の本研究に対する全面的で積極的な協力関係を築いた。これらの研究調査の結果について、中間報告書として『世界の戦争記録と戦歿者慰霊』を纏めて刊行した。
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