本年度は、研究の纏めることを前提に、国内では石川県旧東浅川・湯涌校下地区と広島県廿日市市及び下蒲刈町で、(1)戦前と戦後の連続性、(2)民俗と現代の関係、(3)戦歿者慰霊と宗教性を軸に、戦争紀念碑・慰霊碑・墓地・墓碑石を媒体として、地域社会と戦歿者慰霊をキーワードに戦後の現代における意義を探るための調査を行った。これを踏まえて、日本の戦歿者慰霊のあり方の特徴と地域性・共通性・同質性・異質性を浮かび上がらせることによって、日本的な戦歿者慰霊とは何であるのかを明らかにするために、国外において(1)英米をはじめ連合国として参戦した戦勝国における戦歿者慰霊のかたちを戦争紀念碑と戦歿者墓地・墓碑石を、(2)戦勝国ではあっても戦場・占領地などにより大きな戦禍を被り多くの犠牲者をだした諸国における戦歿者慰霊について国家と地方社会・地域社会が建立した戦争紀念碑・抵抗紀念碑・勝利紀念碑と戦歿者墓地・墓碑石を、(3)日本と同じ敗戦国であるドイツにおいては、国家・地方自治体と地域社会・各種団体などにおけるナチスによる様々な犠牲者慰霊を含む戦歿者慰霊について戦争紀念碑・警告紀念碑・平和祈念碑等と戦歿者墓地・墓碑石などを、(4)1945年以降の現代においても常に過去が現代となっている諸国における戦歿者慰霊について戦争紀念碑と戦歿者墓地・墓碑石を悉皆調査し、そこでの特徴と日本との相似と相異を、紀念碑と墓碑石というもの資料から詳細に分析し、日本的戦歿者慰霊はかたちの特徴と国際的同一性を明らかにしていった。これにより、そこにおける国家・地域・民族・宗教をまたぐ法則性を探り出すことが可能になり、その解明が今後の課題として残った。
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