研究課題
本研究の目的は、第1に、考古資料(鍋鏡など)をデジタル化し、三次元計測データの蓄積をすすめ、PC上で擬似的に資料の一覧を可能とする次世代の研究基盤をつくることを目的とする。第2に、立体的で精密な記録の可視化からこれまでにない立体造形や製作技術についての研究を進める。第3に蓄積したデータの活用に注目し、博物館等での展示補助として計測データの活用の可能性を考えていくことにある。昨年度に引き続き、計測データの蓄積とそのデータの活用方法についての研究を進めた。日本考古学協会において、江田船山古墳などの画文帯神獣鏡の「同型鏡」の笵傷の観察とともに、三次元計測データを利用した鍋鏡の収縮等の変化に注目し、笵傷と鏡径収縮の対応関係から、原鏡の異なる鏡群の存在を想定し、その成果の研究発表をおこなった。また、日本文化財科学会において、計測および比較研究方法の技術的検討を行った成果を発表した。資料のデジタル化については、宗像大社所蔵沖ノ島祭祀遺跡出土銅鏡の調査を6回実施し、三次元計測とともに鍋鏡の観察を行い、破片の整理を進め、記録の資料化をすすめた。また、大和天神山古墳出土銅鏡23面について三次元計測とレントゲン写真撮影による形状及び構造の調査を行うとともに銅鏡の観察を行い、記録の資料化をすすめた。これらと並行して、各三次元計測機の誤差とデータ可視化ソフトへの影響の検証を進め、計測ツールとしての援用を試みた。さらには、三次元計測データの効果的な描出・表現方法など三次元計測研究の基礎固めを行い、研究発表の準備を進めている。これ以外にも茨木市東奈良遺跡出土銅鐸、伝富雄丸山古墳出土三角縁神獣鏡、一乗谷朝倉氏遺跡出土刀装具等土型(33点)、新沢千塚500号および鳥取市古郡家一号墳出土八ツ手葉形青銅製品、東京国立博物館所蔵鏡の計測など多様な考古資料の計測を行った。
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