2008年度は、研究成果に向けて大きく進展した年となった。(1)まず京都大学国際シンポジウムに採択され、その結果2008年12月5日6日に第12回京都大学国際シンポジウム「変化する人種イメージ-表象から考える」7日同専門家会議、を開催した。シンポジウムは、「日本・アジアの人種イメージを問う」、「科学と社会をつなぐ」、「対抗表象を創造する」といった構成により、幅広い多角的・学際的な視点から、第一線の研究成果を社会に向けて発信することができた。シンポジウムは大きな成功を収め、参加者から大きな反響を浴びた。また新聞ラジオなどのメディアで大きく取り上げられ、一般社会への学術的成果への関心を喚起することもできた。(2)共同研究の成果を、『人種の社会的リアリティ』(竹沢泰子編岩波書店)として2009年5月出版予定である。本書は、「人種とジェンダー・セクシュアリティ・階級の交錯」、「「見えない」人種の表象」、「科学言説の中の人種」、「21世紀を歩みだした対抗表象」という四つのテーマを軸に、多数の研究協力者が執筆し、人種と表象をめぐる新しい理論的枠組みを提言した。成果を出版することにより、長期的な学術的貢献を図った。(3)さらに現在は、シンポジウムの外国人研究者らによる論文と日本・アジアに関する論文の英語翻訳を英文の論文集として刊行する企画も進んでいる。2008年3月に京都大学学術出版会の理事会承認を得て、現在進行中である。(4)シンポジウムの報告書を2008年3月に刊行した。さらにシンポジウムの全内容をYouTubeで動画配信を行っている。また趣旨説明挨拶のテキスト、全報告のアブストラクト、写真等もHPで公開中である。(5)京都大学学部生向けのリレー講義を行った。 このように2008年度は、当初の計画をはるかに上回り、高水準の研究成果を数多く上げることが出来た。また共同討議によって国内外の研究者の対話・ネットワークの構築、拡大に大きく貢献した。
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